●● 真冬の星 ●●
今日はこの冬一番の寒さなのだと言う。
空気がきりりとして肌に痛い。厳冬の夜は、交わす言葉の全てが凍る。
「寒ぃ、ありえねぇ……」
「我慢しろ、泉。もうすぐオレんちだから。オレんちついたら……」
「ついたからって、待ってんのは外と変わんねぇほど冷え切った浜田のかわいそうな部屋だろうが」
「お前は遠慮がないねぇ……」
もちろん、凍った言葉のその素は変わるわけもない。気易い仲で交わされる会話はすぐに溶けてはずむ。
泉は浜田と二人、誰もいない夜の道を歩いていた。
泉は隣にある男の顔を眺める。視線は少し上に向く。その事実はすごく自然で少しムカつく。
持っているコンビニのレジバッグごと浜田に軽く体当たりだ。
「ってぇなあ!なーんだよ?泉ぃ?」
浜田は笑う。泉にだけ、笑う。
他に誰もいないということは、なんだか嬉しい気持ちにさせられる。不思議だ。隣には浜田がいる。それだけなのに。
「別になんでもねぇよ。ちょっと寒いから身体動かしてみただけだ」
浜田が笑うから泉も笑った。
関東地方の冬は晴天が続き乾いた冷たい風が吹き込むと、授業で教わった。北国出身の地理の教師によれば、冬の体感温度は東京の方がずっと堪えるのだそうだ。
今日はまた特別に寒い。
何日も続く晴天の夜空は、澄んで冷たくくっきりとして頭上から降り注ぐ。耳が痛くなる程の凍えた空気に泉は身をすくめ、わざと大きな声を上げる。
「だーっ!寒ぃ!」
叫んでも、笑ってくれるのは浜田だけだ。
「もーちょっとがんばれよ。家についたらすぐストーブ点けてやっから。こたつもあるし、とりあえず風はしのげっぞ」
「……浜田はホントに何にもわかってねえなあ」
ぐるぐる巻きにしたマフラーに冷たくなった顎を沈めて泉が言えば、浜田は不思議そうに目をしばたかせた。
「……実家、どうだった?」
浜田は泉の問いに苦笑した。
「どうも何も……なんか泊まってても他人の家にいるみたいで落ち着かなくて困ったぞ。母親なんかさ、オレの好物ばっかり作るし、お土産とか言って山ほど食いもんくれるし。そんな食えねえし。大体バスで帰んだから、持たせる量考えて欲しいよなあ」
年末からほんの数日九州に行っていたという浜田が「戻ったぞー」とメールを寄越したのは年が明けて三日目の今日の夕方のことだ。
ずっと待ちわびていた携帯の着信ランプを見て速攻で電話をしたら、行きも帰りも深夜バスだったから、合計12時間もの間移動した、疲れた、とひたすらぼやかれた。疲れたといって、何をしていたのかと言えばぐーぐー寝ていただけだそうだが、大きな身体を縮こませたまま長時間じっとしていなくてはいけないのは大分堪えたらしい。早朝東京駅に着いてから始発が走るまでスキー帰りの客で混雑しているマックで過ごして、家についた途端ばったり倒れ込むように眠っていたと言う。起きたら、うっかり埼玉に忘れていった携帯に残っていた泉やら梶山やらから猛烈な量の着信履歴を見つけて慌てたと数日ぶりの無事を知らせる電話の向こうで本人がのほほんと言った。
「ホント、悪ぃかったなあ、心配かけたみたいで」
今は隣でやっぱりのんびりとそう言う。
(当たり前だ。孤独死したかと思ったぞ)
突然ぱったり連絡がとれなくなったら心配するのは当然だ。泉など、何度もアパートにきて様子を探ってみたりしたのだ。
幾度電話をかけても一向に出ない浜田にキレまくって年末年始を過ごした。ひどい話だ。
泉はまたちらりと浜田を見る。
浜田の向こうに星空がくっきりと見えた。普段よりはっきりとその存在を主張しているように見えるのは、冷たい風に塵芥を飛ばされたからだろうか。
こんなに、星はいつもはっきりと見えていたのだろうか。
泉がそんなことを考えているとも知らず、浜田はブルゾンに両手を突っ込んでのんびり歩いている。片方の手首には伸びきったコンビニ袋がかかっている。中身はペットボトルのコーラとウーロン茶が一本ずつ。これから浜田の部屋に行って飲むためのものだ。泉の持っている方には適当に買った食べ物が入っている。
いつも浜田の部屋に行く時の風景だ。
くっきりした星空をバックに浜田が大きなあくびをする。
暢気な男だ。人の気も知らないで。
浜田の吐く息が白い。頭に被っているニット帽は初めて見るな、と泉は唐突に気がついた。グレーの太い毛糸で編まれたそれは浜田のくせっ毛をすっぽり包んでいた。
あるいは母親の手編みかもしれないな、と泉は思う。
(結構、似合ってるじゃん)
顔を見なかったのはほんの数日だし、連絡がつかなかったのだって三日かそこらだ。それでもなんだか久しぶりに見る顔だし声だと思う。
なんだか新鮮で不思議な気持ちがする。
どきどきして、いる。
「ホント、埼玉帰ってきてほっとしたわ、実際」
浜田の声に、泉は慌てて思いつくままの揶揄を口にした。
「そんなこと言って、里心ついたんじゃねえの?やっぱ、実家のが楽だろうし。食事とか、洗濯とか」
浜田がちらりと視線を泉に投げる。
「あー、まあ確かに食事はなー。作らなくていいし、まともなモン出てくるし」
「九州の方に来い、とか言われなかったのか?」
(あー、オレ、なんか地雷踏んでね?)
言いながら泉は思う。
自分が想定したのはどっちにとっての地雷かわからないが「ヤバいこと訊いてるな」とか、そんな感触が胸の奥でずきりと疼いた。
「言われたよー?」
浜田は何でもないことのようにそう言った。
「親父は何にも言わないけど、母親にはこっそり言われた。あ、あと弟とかな。このまま帰らなければいいんじゃねえの?って言われた」
「……へえ」
適当にスナックやら飲み物やらを買い込んだコンビニのレジ袋ががさがさと静かな正月の夜に音を立てる。町は、普段よりひっそりとしているように思える。この辺りは元々夜になると往来があまりなくなる住宅街だが、多分まだ人口の何分の一かはどこかに出かけていってしまっているに違いない。
泉は手にしたレジバッグの持ち手をぐっと握りしめる。
「行かねーよ」
浜田が苦笑混じりのため息と共にそんな言葉を吐き出す。
泉は再び隣を見上げた。今度はさっきほどムカつかない。
「行くわけねーだろ?それなら最初っからあっち行ってるっつの」
ゆっくりと視線が絡んだ。
浜田の向こうに星が光る。泉はその光に目を細めた。
「でも、やっぱ家族とかって一緒にいた方がいい……んじゃねえの?」
口から出ていく言葉は、他人が適当に投げているように思える。泉には自分の中のどの部分がそんなことを考えて浜田に言っているのか皆目見当がつかない。
「わかんねえけど。多分今はウチはそういう時期じゃねえんじゃないかな。それにさ、オレはやっぱり埼玉のが好きだぜ?あっちに住んでたことねえから友達もいねえし、土地勘も全然ねえし、家にいてもなんかオレお客さんだし」
浜田は泉の目を見ながらはっきりとそう言った。
「それにオレ、こっちでやることあるし」
「やること?って、なんだ?」
泉が首を傾げると、浜田は足を止める。
「浜田?」
突然立ち止まった浜田に一歩先から泉が振り返る。
「そんなん、決まってんだろ?」
浜田は目を細めた。
「お前だよ」
「……え?」
一瞬、言葉の意味を見失って声が裏返った。
「お、オレ?」
浜田の頭上に光る星がまたやけにくっきり輝いているように見えた。きっとそんなの気のせいに違いないのに。そんな風に思ってしまうのは多分、ほんの数日会わなかっただけですっかり懐かしい気持ちになってしまっている浜田のせいだ。
心臓が脈打つ音は絶対に浜田に届いているに違いない。泉は本気でそう思う。
「そーだよー」
浜田は、なのににっと笑うのだ。
「お前……ら、西浦の野球部の応援。オレはちゃんとずっとやり続けるって、そう決めてんだぜ?あっちに行ったら援団とか無理だろ?だから、オレはこっちにいるの。ちゃんといる意味があんだよ」
「……あーそーかよ」
思わず歩調が速くなる。
「あれ?オレ今いいこと言わなかったか?すっげーいいこと!」
置き去りにされた浜田が慌てたように後を追いかけてきた。
(ばかすぎて話になんねーヤツっているんだな、マジで)
マフラーに冷たい顎を埋めるようにして泉は浜田を無視して歩き始める。なのに、まだ頭上の星はくっきりと見えているから困る。
「なんで泉怒ってんだよ?」
「別に」
「別にって、怒ってんじゃん」
隣に追いついた浜田がちらちらとこちらに視線を投げてくる。無視して少し足を速めた。
浜田のアパートの階段下まで泉は黙ったまま歩き続けた。気持ち早足の泉の後に浜田が三歩遅れて続く。
この屋の住人達の内、残っているのは浜田とあと一階の端っこの一軒だけらしい。電気はどこも軒並み消えていて、真っ暗でなんとなく寒々しい。
「そーだな、ムカついてるかも」
階段を一段だけ上がった泉が言った言葉があまりに唐突だったからか、浜田は「え?」と後ずさる。その反応に気をよくして、泉は振り返ってにっと笑ってみせてやった。夜空の星はますますくっきりと光る。
「寒すぎて耳痛ぇ……だから、ちょっとムカついてるわ」
浜田は一瞬ぽかんとした顔をすると、苦笑した。
「あー……なんだ、オレはまたてっきり……」
「てっきり、なんだ?」
「誤魔化したから、怒ったのかと思った……ぞ、と」
言って浜田はポケットから出した両手を泉の耳にすっぽり被せた。耳元でがさりと大きくコンビニ袋が音を立てる。
「おー、ホントに氷みたくなってっぞ、泉の耳」
浜田の掌から熱が直接伝わってくる。突然与えられた温もりにじんと痛みが広がる。
泉はさせるに任せて浜田を睨んだ。階段一段分。目線の高さは泉の方が少し上だ。だからだろうか、目にこめた力がストレートに相手にぶつかっている気がした。
「ばか浜田。何を誤魔化したって?」
がさり、と耳元でまた大きくレジバッグが音を立てる。浜田の動揺の音だ。
「……それは、その」
口ごもるその困惑が憎らしくて、泉は浜田の両手から抜け出して額をこつんと目の前にあった額にぶつけた。ペットボトルの冷たい感じがブルゾンを着ている肩に当たった。
「ホントにうっぜーなぁ、浜田は」
まともに至近距離から睨んでやる。
心臓ならとっくにおかしくなっているから、今更のことだ。
「い、泉……」
浜田の瞳の奥の表情が短い間にくるくる変わる。ひとつだけ惜しいのは、頼りの灯りは薄暗い廊下の壁の蛍光灯位で、こんなに近くにいるのにその微妙な変化がちゃんとは読みとれないことだと泉は思う。空の星はあんなに明るく輝いているのに、肝心な浜田の瞳の動きはよく見えない。
(あ……)
ふいに、恐くなった。
「行くぞ。やっぱ外寒ぃ……」
泉はきびすを返して、浜田から離れると階段を駆け上がる。と。
「……っ!」
ほんの数段上がっただけで後ろから捕縛された。
脇の下からくぐった浜田の腕がぐい、と泉の身体を抱きしめてくる。がさり、とやっぱりコンビニ袋が大きな音を立てる。今度は浜田のと泉が手にしているのと二つ分。
「はま……っ!放せ、ばか!」
振りほどいたら浜田が階段から落ちてしまう、そう思ったら言葉だけでしか抵抗できない。
「泉……」
身体を捉えられたのが先。伸びてきた腕に絡め取られ、追いついた浜田の身体がぶつかるように背中に密着する。肩口にニット帽の頭が預けられた。
「泉……」
繰り返し耳元で名前を呼ばれて、それまで「寒い」と思っていたはずが全身がかっと熱くなるのがわかった。ずるずると、膝が落ちる。四つん這いの姿勢で階段に縋り付く。もう立っていられない。
泉の身体にのしかかるようにして、マフラーがぐるぐる巻かれた首筋に浜田が顔を埋めて何度も擦りつけてくる。漏れた吐息が何度も布の隙間の首にかかる。
星があまりに鮮明に輝く。こんなにはっきりと見えていたのかと、また頭の片隅で泉は思っている。
「泉……」
耳を、呼ぶ声が直撃した。息混じりの声に身体が竦む。と、浜田はさっき自分の手で少しばかり温もりをやった耳朶を唇で挟むのだ。
「……っ!」
もはや、全身余すところなく真っ赤だ。真っ赤になっているに違いない。
唇が、頬の脇に触れる。掠るように触れ、それから吸い付かれる。ほとんど強引に後ろから回された手が泉の頬にかかり、そのまま背後に向かされた。
「……っ!」
キスをする時には目を瞑るものだと泉はずっと思っていた。別に大した理由があるわけではない。多分読んだマンガのキスシーンが全部目を閉じていたとか、ドラマでも大概そうしているとか、こっそり隠れて観た兄のAVでは……どうだったか覚えていないが、そういうものだと思っていた。
唇が誰かのそれに触れる感触。そのまま重なり、深くなる。
手にしたレジバッグを落としたらだめだ、と頑なに握りしめる。
より深く触れてくる浜田の唇に圧倒されて、いつか目を閉じていた。
やっぱり、キスをする時には目を閉じるものだ、と泉は思った。
レジバッグを、まるで命綱でもあるかのように握りしめている。
(ああ、これ、やべぇなあ……)
外階段の途中で、浜田に抱かれている。
部屋の灯りは一階の階段から一番遠い部屋のそれだけだが、そろそろ帰省先から隣の大学生とか階下のサラリーマンが戻ってきてもおかしくない日付なのだ。
階段で夢中でキスをしている男二人を見たらどう思うだろうか。そうしてその片割れが時々顔を合わせるちょっとワケありっぽい同じアパートの高校生だと気付いたら。
(でも、キス……気持ちーんだけど)
ちゅ、ちゅ、と耳に過剰な音が届く。まずいことに簡単に相手の舌の侵入を許してしまった。困ったことにはそっちの方が気持ちがいい。
欲望に滅法弱い男子高校生としては、この気持ちよさに勝てる理性など持ち合わせてはいない。
「泉……」
ようやく離れた浜田の目が潤んでいる。その瞳を見て、泉はぎくりとした。
(ああ、マジ、やべぇ……)
身体はとっくに熱い。
「もう、誤魔化さないけど、いいか?」
(ホント、こいつ、ムカつく)
「誤魔化さなくなったら、オレ……」
例えばいつもならば話を逸らしてはぐらかすことができるのに。それが、できないで泉はただ熱のこもった浜田の瞳の前に無防備に曝される。
目の前に突如吹き荒れ始めた嵐に、自ら飛び込もうとしている。
「……あ、泉、行くぞ!」
遠くからこちらに向かって近づいてくる人声が聞こえてきた。浜田ははっとしたように立ち上がると、腰が抜けた状態になっている泉の手をとった。手を握ったままて階段を上がろうと泉を引っ張った。
「あ……」
泉は手を引く浜田を見上げる。
ほんの少しだけ同じだったはずの目線はもういつもより高い位置にある。
ふと、浜田の瞳が不安そうに歪んだ。
「泉、オレの部屋、来るか?」
(やだ、とか言ったらどーすんだよ?)
泉は恐々こちらを見下ろす男を見つめる。
(やだ、行かねーとか言ったら、お前傷つくんだろ?)
だけど、このまま浜田に手を引かれるままに部屋に入ったらどうなるのかさすがにわかる。
「泉、イヤなら……」
浜田の声が自信なげに弱くなる。夏大ではスタンドで誰より大きな声を出していたくせに、今はこんなわずかな距離でさえ聞き取るのがやっとだ。
(行かねーとか言ったら、てめぇは泣くんだろ?)
声をあげず、涙も見せず、深く傷ついた顔をして泣くのだろう、と泉は思う。
ようやく泉は息をついて、立ち上がった。奇跡的にコンビニの買い物はひとつも零れてはいない。惚けた頭を何度か振って、自分を取り戻し浜田を見つめる。
「さっき何をお前が誤魔化したのか、ちゃんと言うか?」
(あー。オレってばかだなあ)
泉は言いながら自己嫌悪だ。
「言う」
浜田は即答する。
(ほだされて、後で泣くのはオレだぞ、多分)
いろいろ総合して考える程に、きっと受け入れる側になるのは自分だろうと泉は思う。
「ウソついたらはっ倒すぞ?」
(絶対ぇ、こいつ重いって)
上背も体重も浜田の方が数段勝っている。身体の上にこの男の重みを受けることを想像して泉は呻る。
「言う。絶対言う。今ここで言うか?」
「うぜぇ。それに寒ぃ。さっさと部屋、入ろうぜ」
浜田の顔がぱっと輝いた。笑う。泉はそれで(しょーがねーなー)と思った。
割と毎日のように田島とか三橋とか、部の連中に対しては(しょーがねーなー)と思ったりしている。
でもこの(しょーがねーなー)は、多分それとは違う。特別だ。
安心したように笑った浜田の頭上にあまりにもくっきりと星が輝いている。昨日、連絡がつかずに悶々としながらここに来た時にも、きっと同じように輝いていたはずなのに泉はまるで気付かなかった。
365日、練習帰りの夜空にもきっと同じ星は輝いていたに違いない。
それでも、この輝きを意識したのは浜田といる今夜が初めてだ。
泉は今夜の星をすごく「綺麗だ」と思った。
だから(しょーがねーなー)と思わざるをえない。他の誰といても見ることのない輝きを、浜田といれば気付くことができたのだ。
二人を急かした声が近づいてくる。
「泉、行こう」
浜田が手を引く。
泉は引かれるままに、階段を上がった。
すぐ脇の道をカップルが「寒いね」「早く家に帰ろう」と話しながら通り過ぎていく。
浜田に続いて部屋のドアをくぐる前、泉は一瞬その声の主達に振り返る。
互いの顔を見つめあいながら歩くごく普通の仲の良い恋人同士に見えた。多分その見立てで間違いはないのだろう。
向き直ればそこにいるのは、先輩で同級生で友達で、これから多分もう一つ違う間柄が追加される男だ。
(ここで逃げたらどんな顔すんのかな?)
沸き上がってくる悪戯心は、この期に及んで防衛本能が働いたらしい浜田に身体ごと抱き取られてあえなく息絶えた。
背中でドアが閉まる。鍵がかかる。
抱きしめられて、泉は今度は最初からキスをするために目を閉じた。
「……」
耳元に、約束の答が注がれる。
多分、頭上には今も恐ろしい程の星が明るくくっきりと輝いているに違いない。